犬のしつけと聞くと「お手」や「おすわり」「待て」などを思い浮かべるのはないでしょうか。
実は、犬のしつけにはそういったコマンド(合図)とは別に、犬にとっての正しい社会性を学ばせることもしつけの一つだということをご存じでしたでしょうか。
もしかするとコマンドよりも大切なしつけかもしれません。
ここでは犬の正しい社会化のしつけ方をご紹介していきます。
犬の社会化とは
飼い主さんが犬の社会化と聞いてピンとくるのはどんな事でしょうか?
人間に置き換えると「他の人と共同作業ができること」「協調性があり集団行動ができること」「社会情勢や風潮などに関心を寄せていること」などを「社会性が高い」とよく言われます。
しかし、そういったものは犬の社会性とは呼ばず、「与えられた生活環境に慣れること」や「人間社会で生きていく能力をストレスなく培うこと」が「犬の社会性」と言われます。
犬が社会性を学ぶには、人間と他の犬との交流が必要不可欠になることを覚えておきましょう。
犬の社会化に大事なこと
- 恐怖心を持たせない
- トラウマにさせない
- 楽しかったと思わせる
飼い主さんが愛犬観察の時間を作ること
犬の社会化には、体験や物事に対して「恐怖心」や「トラウマ」を持たせないことがまずは大切です。
一般的に多いのが、動物病院や家への来客に対して恐怖心を持ってしまうことではないでしょうか。
動物病院に恐怖を感じたりトラウマになってしまうと、二度と同じ経験をしたがらなくなってしまうため、獣医さんに触れられただけでも威嚇したり噛むようになってしまいます。
このような日常生活での支障を少しでもなくすために、強引に嫌がる環境に慣らそうとせず、嫌がったり萎縮してしまうことをいかに「楽しかった」と思わせるようにできるのかを考えましょう。
ですので、飼い主さんは、時間をかけて愛犬が何に対して興味を持っているのかなどを観察する時間を作ることが大切なのです。
犬の社会化におすすめの5つのトレーニング
愛犬に社会性を身につける5つの方法をご紹介します。
犬に社会化を学ばせるのに一番良い時期は、生後3週~13週頃と言われています。
生後13週だとワクチン未接種の場合、室外における社会化を学ばせるには感染リスクがあるため、まずは室内での様々なものを見せて触れさせることから始めましょう。
犬とピクニックに出かけましょう
犬とピクニックに出かけると聞くと「どういうこと?」と思う人も多いはずです。
飼い主さんが外でゆったりとシートを敷いて、美味しいものを犬と一緒に食べながら、他の犬の観察をするだけです。
ピクニックといっても、お昼過ぎだけに限定したものではなく、朝の出勤ラッシュの時間帯や子供たちが公園で遊んでいるような時間帯、夕方の学生さんが多い時間帯など、犬の視野を広げるために様々な時間にピクニックに出かけましょう。
自転車に乗っている人やベビーカーを引いたお母さんなど、たくさんの人や物を目にして出会うことで、自転車や車にいきなり興奮するようなことが減っていきます。
大きな音や聞きなれない環境音に慣れさせましょう
例えば、救急車や電車の音などは家の中ではなかなか聞くことができません。
また、赤ちゃんの泣き声などに慣れていない犬は、恐怖心を持つことがあります。
そうした恐怖心や警戒心をなくすために様々な環境音に慣れさせることが大事です。
今ではYouTubeなどで赤ちゃんや犬用に環境音に慣らせるための音源もあります。
そういった音源を流してあげることで恐怖心や警戒心を事前に解いてあげることができます。
お客さん(来客)に慣れさせましょう
飼い主さんしか家にいない時間が続くと、突然の来客に対して威嚇してしまうことがあります。
犬に縄張り意識が芽生え、家が自分の縄張りになってしまうからです。
そうした縄張り意識をなくすために、時々ホームパーティーや親戚を招くなど、家の中は自分だけの居場所ではないということを学ばせましょう。
愛犬の体を触りましょう
動物病院やドッグラン、散歩中などに人に触られても大丈夫なようにしておく必要があります。
人から体を触られることが嫌いな犬になってしまうと、動物病院やペットホテルに預けることができなくなってしまうため、飼い主さんの生活にも影響を及ぼす可能性があります。
普段から頭だけでなく、足やお腹なども触るようなスキンシップを心がけましょう。
強い噛みつきはしっかりと抑制しましょう
犬の口は人間の手にあたり、手を使わないのは人間にとって不便なように、犬にとって口が使えないのは不便なことです。
強い噛みつき癖がある場合は、噛みつかないためのしつけや治療も必要です。
飼い主さんと遊んでいる時に興奮して歯を当ててしまうことはよくありますが、叱るのはあまりいいしつけとは言えません。
犬は本来、他の犬とじゃれ合う時に口を開き合って遊びます。
飼い主さんがその遊びの行動を抑制してしまうことで、犬本来の遊び方に満足できないだけでなく、犬同士の社会性も育たなくなってしまいます。
飼い主さんがしっかりと見極めて、強い噛みつきはしっかりと抑制し、じゃれ合うような噛み方は加減を見て叱るようにしましょう。
一気にすべて覚えさせるのではなく確実に1つ1つ慣れることを増やしていきましょう。
「うちの犬はフレンドリーなので大丈夫」は大間違い
よく「我が家の犬はフレンドリーで犬も人も大好きなんです」と社会性があるように言われる飼い主さんが多く見受けられますが、犬や人が好きという好奇心と、社会性があるのとは大きく違います。
他の犬にがっつくのはフレンドリーではなく興奮が高まってしまっているだけですし、人に対して飛びついたり体をすり寄せたがるのも興奮からくるものであって、人懐こいとは言えません。
そういった犬は、遊びや興奮のコントロール加減を知らない可能性があります。
遊んでいるからいいやとその場に置き去りにするのではなく、いったん対象の犬や人から愛犬を離れさせ、落ち着きを取り戻したのを確認してからまた遊ばせるようにしましょう。
犬の社会化に向けての注意点
犬の社会化に適切な時期は、ワクチン未接種の場合、室外で社会性を学ぶにはリスクを伴うと説明しましたが、あまり神経質にならなくても大丈夫ですが、空気感染などのリスクが室内より高まるので最善の注意を払うということです。
他の犬や他の人との接触を避け、早朝や深夜帯などの人の少ない時間を見計らって外に慣れさせてあげることから始めてください。
生後3週間から13週間は、一般的に犬の社会化期と言われており、その時期に学んだことや体験したことは順応しやすことから、あらゆるものに慣れさせる大切な時期だと言えます。
性格が決まるとまで言われる大切なその時期を逃さずに、できるだけ多くのことを学ばせてあげましょう。